オーストリア第2の都市・グラーツ(Graz)では、生活に欠かせない公共交通としてトラム(路面電車)が広く利用されています。観光にも通勤・通学にも便利なトラムですが、日本と大きく違うルールや注意点があるため、知らずに乗ると高額な罰金を取られてしまうことも。
この記事では、筆者(長期滞在中)が実際に生活する中で体験したことを踏まえつつ、「これだけは知っておきたい!」という情報をまとめました。
1. トラムは“無改札”だけど、無賃乗車は超厳罰
● 改札がないので、気軽に乗れるが…
グラーツのトラムは改札機が存在せず、誰でもそのまま乗れてしまいます。日本では改札を通らないと電車に乗れないのが当たり前なので、初めてこのシステムを体験すると驚くかもしれません。
ただし!
“乗った時点で有効なチケットを所持していること”が義務です。
見回りの係員(いわゆる“検札官”)が突然やってきてチケットの提示を求めてくることがあり、もしチケットがなかったり、無効だった場合はその場で高額な罰金を請求されます。
● 罰金はいくら?(2025年現在)
状況 | 罰金額 |
---|---|
大人:その場で即時支払い | €105 |
大人:後日振込など遅延支払い | €135 |
18歳未満:即時支払い | €53 |
18歳未満:後日支払い | €68 |
※罰金はその場で現金またはカードでの支払いを求められることがあります。 (Holding Graz公式サイトより)
● 検札は意外と頻繁。特に外国人は狙われやすい?
検札官は制服を着ていない(普段着)ので、一見すると一般の乗客に見えます。ある停留所で突然係員が乗ってきてチェックしていく、というスタイルが多いです。筆者自身、グラーツに来てわずか2週間で検札を受けました。もちろんチケットは持っていたので問題ありませんでしたが、あまりにも突然だったため、少し動揺しました。外国人観光客や新しい移住者は、土地のルールに不慣れなことも多く、「知らなかった」が通用しないため、特に注意が必要です。筆者の友人は、乗車時に混雑していて券売機にたどり着けず、後ろから来た検札官に捕まって問答無用の罰金だったそうです。
2. チケットの種類とおすすめの選び方
● 短期滞在者向けチケット(券売機またはアプリで購入)
- 1時間券(Stundenkarte):€3.20前後
- 24時間券:€7.00前後
- **子供(6〜15歳)・若者(15〜19歳)**は割引あり。5歳以下は無料。
✅ 目安:1日3回以上乗るなら24時間券の方が確実にお得!

3. 長期滞在者におすすめの「定期券」&補助制度
● 長く住むなら、定期券はマスト!
グラーツで日常的にトラムやバスを利用するなら、定期券(Wochenkarten/Monatskarten/Jahreskarten)の購入がおすすめです。毎回チケットを買うよりも圧倒的にお得で、毎日の通勤・通学・買い物にも気軽に利用できます。
● 年間チケットにはうれしい補助制度も!
特におすすめなのが「Klimaticket Steiermark(ステリア州内で使える年間パス)」。通常料金は€414(※2025年時点、高齢者や若者割引あり)ですが、ここから居住者には€100の補助があります。さらに職場によっては、企業側からの交通費補助(企業に依ると思いますが€150の例も)が出る場合もあります。
● 子ども用の通学チケット「Inner-Schüleren」も要チェック
グラーツでは、小中高生向けに「通学用の特別定期券」が用意されています。ただし、利用範囲は自宅~学校間のみに限定されます。料金は年間たったの€19.60です。ただしこのチケットには以下の取得条件があり、オーストリアでの居住許可証を有しており、かつ、家族手当(Familienbeihilfe)の受給者である必要があります。つまり、移住直後の家庭ではまだ制度に登録されていないことが多く、取得できずに通常料金で通学する羽目になるケースもあります。これは子育て家庭にとってはちょっと残念な点ですね。
● その他の選択肢:10回券
「毎日は使わないけど、月に何度かは使う」という人も多いはず。そんな方には10回券がおすすめです。10回分まとめて購入すると、約20%割引でお得です。ただし、自動券売機やアプリでは購入できず、街中のTABACO/KIOSKやGraz Linen(トラムの運営会社)で購入する必要があります。TABACO/KIOSKはチケット売っている雰囲気あまりないのですが、聞いてみると出してきます。
注意点としては、自分で乗車時に打刻(刻印)する必要があること。打刻を忘れるとチケットを持っていても無効と見なされ、罰金対象になるので、要注意です!

4. 「打刻忘れ」で罰金に!? 回数券ユーザーは特に注意
● 「打刻」は自己責任!トラム・バス車内にある機械で
オーストリアの公共交通機関では、「買っただけ」ではチケットは有効になりません。特に回数券(10回券など)を使う場合、乗車のたびに改札機で刻印する必要があります。改札機は、トラム・バス車内のドア付近に設置されています。紙のチケットを挿し込むと、日時・停留所番号などが印字されます。これにより、そのチケットがいつから有効かが明確になり、不正利用防止にもなっているわけです。

● 打刻忘れ=「無賃乗車扱い」
たとえチケットを持っていても、「打刻していない」状態で検札に見つかると、チケットは無効扱いとなり、通常の無賃乗車と同じく、罰金€105〜135の対象になります。これは筆者の周りでもよく聞く「うっかりミス」なので、乗車したら真っ先に打刻!を習慣にしましょう。
● アプリ利用なら打刻不要(自動で時間カウント開始)
なお、GrazMobilアプリでチケットを購入した場合は、打刻操作は不要です。購入ボタンを押した時点で時間カウントが始まり、そのまま検札時にQRコードを提示するだけでOK。ただし子供の分のチケット購入する場合、いちいち子供の名前や誕生日を入力する必要があって、そこは結構面倒くさいです。
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