オーストリア・グラーツ工科大学(TUGraz)のゲストハウスに1か月以上滞在する機会がありましたので、その様子を詳しくレポートします。こちらのゲストハウスは、なんと1869年にアテムス伯爵によって建てられた別荘を利用した建物で、非常に歴史と趣のある滞在体験ができます。
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予約方法:大学の先生経由が必須
このゲストハウスは、自分で直接予約する方式ではありません。必ずTUGrazの先生を通じて予約してもらう必要があります。入居のおよそ2週間前になると、申込をしてくれた先生に鍵、契約書、住民登録票(Meldezettel)が渡されます。入居当日には、先生からこれらを直接受け取ってから入居するという流れになります。Meldezettelはこちらに注意事項を掲載しておりますので、是非チェックしてください。
立地:ヒルムタイヒ(Hilmteich)の森の中
ゲストハウスは、グラーツ市内屈指の高級住宅地・ヒルムタイヒ(Hilmteich)に位置しています。ヒルムタイヒは緑豊かな小高い山で、中心地であるハウプト広場(Hauptplatz)までもトラムで10分ほど。静かな環境と都市部へのアクセスの良さを兼ね備えています。周囲には大きな邸宅が建ち並ぶエリアで、「グラーツの軽井沢」的な雰囲気といってもよいかもしれません。
アクセスの注意点:スーツケースはタクシー推奨!
ここで最大の注意点。ゲストハウスは「山の中」にあります。しかも、砂利道を1kmほど登る必要があるため、スーツケースを引いて行くのは非常に大変です。私の場合、大きなスーツケース2つを雨の中で運ぶ羽目になり、帰る頃には新品だったスーツケースがボロボロに……。そのため、初回の移動は迷わずタクシーを使うことを強くおすすめします。市街地からでも20ユーロ以下で済むので、物価を考えればコスパ良しです。
山の入り口からゲストハウスまでは分かれ道がいくつかあります。事前に地図でルートを確認しておくと安心です。※ゲストハウスの入り口には案内板も設置されています(写真あり)。

建物の外観と全体構造
建物は立方体のような形で、3階建て。最上階には共用キッチンがあります。外にはガーデンテーブルや物干し竿もありますが、ほぼ誰も使っていない様子でした。住んでいる人も少なく、ほぼ貸し切り状態の静けさ。まあ、家賃がけっこう高いので、それも理由かもしれません。

入館からの流れ
オートロックの共用玄関を入ると、右手に郵便受けがあります。郵便屋さんは共用玄関の鍵を開けられるようで、各部屋のポストは自室の鍵で開閉可能。中の階段には大きな窓があり、レトロでとてもおしゃれ。さすが元伯爵の別荘、と感じられるデザインです。


オーストリア全体で共通なのですが、部屋のドアを開けるには、鍵を2回「カチャッ」となるまで回す必要があります。初めての方はちょっと戸惑うかも。また、内側に鍵を差しっぱなしにしてしまうと、外から開けられないという不思議な仕様があり、私は何度か家族に締め出されました…。
部屋の内部:広々快適だが虫との戦いも…
部屋の内部は高い天井と大きな窓、おしゃれなインテリアで雰囲気は抜群。ただし、虫(アブのようなもの)が大量にいて、落ちていた布でひたすら叩き落とすところから生活がスタートしました…。
古い建物なので、虫の侵入はある程度仕方ないですね。
トイレとシャワーは共用で、バスタブはありません。シャワーはノブの操作で高温のお湯が出るタイプで、ほんの少し動かすだけで温度が激変するため、繊細な調整が必要です。


部屋内の設備:洗濯機・乾燥機・キッチン周り
洗濯機はサムスン製ですが、正直あまり使い勝手はよくありません。通常モードだと洗濯だけで2時間かかります。なのでSUPERSPEEDモードだけ使用していました。それでも40分はかかります。乾燥機は2時間かけてあまり乾きません。また、洗濯容量が小さいため、家族連れには少々厳しいです。
ドイツ語表記の謎モードについては、英語訳一覧表を壁に貼ってくれている先人の知恵に助けられました(写真あり)。


キッチンには、電磁式コンロ・オーブン・電子レンジ・冷蔵庫が揃っています。特にオーブンは日本の自宅より高性能で、チキン一匹がきれいに焼けるほど。大活躍でした。一方、冷蔵庫は容量が小さく、ドアの閉まりも悪いため、油断すると結露で中がびしょびしょに…。これだけは不満でした。


インターネット環境
インターネットについては、教育機関向けのWi-Fiサービス「eduroam」と、TUGrazのゲスト用Wi-Fiが使えるようになっています。eduroamを利用できる場合は設定しておけば自動的に接続されますが、eduroamにアクセス権がない方(外部の研究者など)は、あらかじめ大学側に申請してゲスト用のアカウントを発行してもらう必要があります。接続の安定性については特に問題なく、動画の視聴やオンライン会議なども快適に行うことができました。
ベッド・寝具・テレビ
ベッドはダブルベッドが2台置かれており、そのうちの1台はソファーベッドとなっています。掛け布団は3人分まで用意されているので、最大で大人4人までならなんとか宿泊は可能です。ただし、それ以上の人数で宿泊する場合は、寝具の追加が必要になります。
室内にはテレビが2台設置されており、我が家ではSwitchの接続やYouTubeの視聴に活用していました。オーストリアの現地番組を視聴することは一度もありませんでしたが、日本から持ち込んだ機器でのエンタメ消化には全く問題ありませんでした。
ゴミ出し事情
建物の敷地内には専用のゴミステーションがあり、そこに分別してゴミを出すことができます。設置場所の写真も撮影してありますが、ゴミの分別方法や出し方のルールが非常に複雑で、初見ではかなり戸惑うはずです。これについては、後日別記事で詳しくまとめる予定ですので、興味のある方はそちらをご覧ください。

家賃:月683〜1434ユーロ
このゲストハウスの家賃は月額で683〜1434ユーロと、部屋の広さ(30m2~90m2程度)などに応じて幅があります。正直に言えば、この価格帯であればAirbnbでより安価な滞在先を見つけることも十分可能だと思います。特に単身での滞在なら、Airbnbのほうがコストパフォーマンスに優れる場面もあるでしょう。
しかしながら、Airbnbには鍵の受け渡しトラブルなど初日の段取りに不安がつきものであり、家族連れの場合はなおさら心配がつきまといます。その点、TUGrazのゲストハウスは大学関係者によるしっかりとした対応があり、到着日から安心して生活をスタートできるのが大きなメリットです。
また、せっかくオーストリアに滞在するのであれば、歴史ある伯爵の別荘で「ちょっと優雅な暮らし」を体験してみたい、という動機でこのゲストハウスを選ぶのも十分にアリだと感じました。
真夜中はホラー
何せ森の中にありますので、夜中に行き来をするときはホラーさながらの道を歩くことになります。

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まとめ:貴重な「伯爵の別荘暮らし」を体験!
総じて言えば、TUGrazのゲストハウスは、日本人にとってはなかなか体験できない「伯爵の別荘暮らし」ができる非常にユニークな宿泊施設です。アクセスの難しさや、虫、冷蔵庫の不満など、完璧とは言えない点もありますが、それを補って余りある魅力があります。
静かで落ち着いた環境の中、広々とした部屋で家族とゆったりと過ごす1か月は、忘れられない思い出となりました。日本人が伯爵の元別荘に暮らすなんて、そうそう経験できることではありません。機会のある方は、ぜひ一度検討してみてはいかがでしょうか。


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