【要注意】オーストリアでのカード決済・現金引き出し・海外送金の最適解とその罠

生活

 オーストリアで生活する中で避けて通れないのが「お金」の扱い方です。カード決済にしても、現金の引き出しにしても、あるいは日本からの海外送金にしても、正しい手順を踏んでおかないと驚くほど高い手数料を取られることがあります。しかもそれは、取られていることに気づかないまま進行するというのがまた厄介です。

 筆者も何度か失敗を繰り返しながらようやく最適な手段を見つけましたが、最初の頃はちょっとした油断で数千円単位の損失が出ることもありました。今回はその経験をもとに、どんな手法にも潜む“罠”と、それを回避するための具体策についてまとめます。




クレジットカード決済は非効率。ソニー銀行の外貨口座活用が鍵

 オーストリアでクレジットカードを使うと、一般的には約3%の為替手数料が発生します。これが高すぎると感じる方には、ソニー銀行のデビットカード(Sony Bank WALLET)の活用をおすすめします。

 このカードの最大の強みは、外貨口座と連動している点にあります。まず、ソニー銀行で外貨建て口座(ユーロなど)を開設し、事前に円口座からユーロを購入して外貨を用意しておきます。このときの為替手数料は、ユーロであれば市場レートに対してわずか0.1%程度の上乗せです。

 外貨口座に十分なユーロを確保した上でカード決済すれば、ほぼ最良のレートで決済が可能です。ただし、口座の残高が不足していると、円口座から自動補填され、ここでまた3%の手数料が発生します。

 さらに注意すべきは、店舗の端末で「円決済」か「ユーロ決済」かを聞かれる場合がある点です。ここで「円」を選ぶと、端末側の為替レートが5%以上割高になることが多く、非常に損です。必ずユーロで決済するようにしましょう。

 また、ソニー銀行では土日に外貨の購入ができません。週末に買い物や旅行の予定がある場合は、事前にユーロを購入しておくことが重要です。


現金引き出しはPRESTIAのGlobal Passを使いつつ、ATM選びも慎重に

 オーストリアではカード社会が進んでいますが、それでも現金が必要な場面は意外と多く、パーティの会費や学校関連の支払い、小さな売店での買い物などで必要になることがあります。このときも、クレジットカードでのキャッシングは避けた方が良いです。為替レートが市場より5%以上悪いケースが多く、繰り返せば大きな損失になります。外貨口座を使って現地ATMから引き出す場合でも、ソニー銀行は1.8%の手数料が発生するため、これも非推奨です。

 筆者が実践しているのは、SMBC信託銀行(PRESTIA)の「Global Pass」の利用です。三井住友信託銀行とは別会社なので注意が必要です。このカードは外貨建て口座と連動しており、外貨口座に十分な残高があれば、現地ATMからユーロを直接引き出すことができます。

 ただし、PRESTIAには大きな落とし穴があります。口座維持のためには、「日本円で50万円」または「外貨で20万円相当」の預金を常に維持しなければならず、これを下回ると月2000円の口座維持手数料が発生します。特に開設から2ヶ月目以降は油断できません。開設後はすぐに十分な資金を入金する必要があります。なお、正確には預金である必要はないのですが、それ以外の余計なサービスの利用(ローンなど)は論外です。また、外貨購入の際には「積立サービス」を利用することで、手数料が無料になります(実質的には為替レートが市場より0.6%程度悪い)。通常のスポット購入は手数料が高くなるため避けましょう。

 ATMにも注意が必要で、SPARKASSE銀行のATMでは1回の引き出しで4.9ユーロの手数料がかかり、上限400ユーロまでという制限もあります。これは実質1%以上のコストになります。同様の手数料は、WISEカードでも発生するため、EU圏外発行のカードだからという単純な理由ではなさそうです。

 筆者が試した中では、BAWAG銀行のATMは手数料無料で引き出しが可能でした。ただし、ここでも「円建てで引き出しますか?」という誘導が何度も表示されるため、すべて拒否する必要があります。そこまでしてようやく、外貨口座からのユーロ引き出しが成立します。まったく性格の悪い仕様ですが、現状ではこれがベストです。

カードを挿入して英語を選択するとこちらの画面に。ここはCASH WITHDRAWAL(現金引出し)を選択
すると6%も為替手数料の乗せた法外(?)なレートでの取引が出てきます。ここは「PROCEED WITH NO CONVERSION」を選択
すると、何故かもう一度ぼったぐり取引の画面が出てくるので、もう一度「PRCEED WITH NO CONVERSION」を選択。これで完了です。性格悪いですね。

海外送金はWISEが最も効率的

 海外送金については、WISEが現状で最もコストパフォーマンスに優れた選択肢です。実際に筆者が利用した範囲では、50万円〜2万円程度の送金で、手数料は0.6〜1%の範囲に収まることが多く、非常に効率的です。

 ただし、WISEの利用にもコツがあります。日本円を直接WISEの日本円口座に送金してから送金を行うと、手数料が0.5%程度割高になることがあります。最も効率が良いのは、「日本円をチャージしておき、そこから送金」する方法です。

 また、外貨でチャージしても手数料は安くならないどころか、むしろ高くなることもあります。そのため、外貨チャージは不要です。ただし、チャージした日本円を日本に戻すときには手数料が発生するため、不要なチャージは避け、必要なときに必要な額だけチャージするのが賢明です。

 チャージ時の送金手数料も注意が必要ですが、住信SBIネット銀行や楽天銀行などを使えば振込手数料無料のケースも多く、上手く使い分ければ追加コストを抑えられます。




終わりに:失敗しないためには「自分で管理する力」が必要

 オーストリアでの資金管理は、どんな手段を選ぶか以上に、それをどう使うかが重要です。ほんの小さなミスが、高額な手数料という形で返ってくる世界です。カードの残高、通貨の選択、ATMの種類、送金方法──その一つひとつを自分で判断し、管理していく力が求められます。

 慣れてしまえば、ごく自然に運用できるようになりますし、それによって不要な出費が大幅に減るのは間違いありません。海外生活では、ちょっとした知識が「大きな節約」につながるのです。

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