【グラーツの秋の味覚】街角に漂う香ばしい誘惑、焼き栗の屋台

オーストリア第2の都市グラーツでは、夏が終わり、少しずつ空気が冷たくなり始めると、街の雰囲気がガラリと変わります。
アイスクリームスタンドが姿を消し、代わりに通りのあちこちに登場するのが——そう、焼き栗（マロン）屋台です。

グラーツの中心地、ハウプトプラッツ（Hauptplatz）やエッゲンベルク城近くのストリート、さらには大学周辺でも、この時期になると煙を立てる屋台が並び始めます。香ばしい栗の香りが風に乗って漂ってくると、「ああ、もう秋が来たな」としみじみ感じる瞬間です。

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■ 屋台の栗は「1/4リットル」単位で販売
■ 食べ歩きしやすい工夫と味の違い
■ グラーツの秋の風物詩として根付く文化
■ 屋台の楽しみ方とちょっとしたコツ
■ おわりに：手のひらのぬくもりが伝える秋の訪れ

■ 屋台の栗は「1/4リットル」単位で販売

オーストリアの焼き栗屋台では、ちょっとユニークな単位で販売されています。
日本では「100グラム」や「1袋」などで売られますが、ここでは1/4リットル（Viertel Liter）単位で量られており、1単位でおよそ4ユーロ前後。
おおよそ8〜10粒ほど入っているので、食べ歩きにちょうどいいボリューム感です。

屋台では注文をすると、その場で紙袋に包んで渡してくれます。
袋の底からほのかに温もりが伝わってきて、手を温めながら歩くのも秋の楽しみのひとつ。
特に朝晩が冷え込む11月頃は、この温かさが本当にありがたく感じます。

■ 食べ歩きしやすい工夫と味の違い

オーストリアの焼き栗は、日本のものと少し違っていて、最初から鬼皮に切れ目が入れられているのが特徴。
そのため、手で軽く押すだけで殻がパリッと割れ、中の栗を簡単に取り出すことができます。
観光中でも、買ってすぐその場で食べ歩けるのがうれしいポイントです。

味わいはというと、日本のほっくりした和栗に比べて、少し香ばしさとナッツ感が強い印象。
品種の違いもあるのか、舌触りはやや粉っぽく、甘さは控えめですが、そのぶん焙煎の香りが際立っています。
外の焦げ目がほんのりと苦味を加え、まさに「大人の秋の味覚」といったところ。

屋台によって焼き加減や栗の種類が微妙に違うのも面白い点で、常連の地元民の中には「ここの屋台の方が甘い」とお気に入りの店を持つ人も少なくありません。

■ グラーツの秋の風物詩として根付く文化

実は、この焼き栗の屋台はオーストリア全土で秋から冬にかけて見られる伝統的な風物詩ですが、グラーツは特にシュタイアーマルク州（Steiermark）産の栗が有名で、地元産の栗を扱う屋台が多いのが特徴です。
シュタイアーマルクは栗の木が多く、古くから「ケストナーマーケット（Kastanienmarkt）」と呼ばれる栗市も開かれていたそうです。

また、グラーツでは焼き栗と一緒にシュトゥルム（Sturm）を楽しむのが定番。strumについてはこちらの記事で解説していますので、ご参照ください。
地元の人たちは、仕事帰りに焼き栗を片手に一杯飲みながら秋の夕暮れを楽しみます。
観光客でもスーパーやマーケットで簡単に手に入るので、グラーツの秋を体感したいならこの組み合わせをぜひ試してみてください。

■ 屋台の楽しみ方とちょっとしたコツ

屋台での注文はとても簡単で、「Ein Viertel Maroni, bitte（アイン・フィアテル・マローニ、ビッテ）」と伝えるだけ。
「Maroni（マローニ）」はドイツ語で栗のことです。
紙袋を受け取ったら、すぐに開けて湯気を感じてみましょう。焼きたての栗からは、甘く香ばしい香りがふわっと広がり、思わず笑顔になります。

ちなみに、焼き栗は冷めると皮が剥きにくくなり、風味も落ちてしまうため、できるだけアツアツのうちに食べるのがおすすめ。
屋台のすぐ横で一粒ずつ剥きながら味わうのが、グラーツ流の楽しみ方です。