はじめに
前回はチェスキー・クルムロフ市街地について紹介しましたが、今回は街のシンボルであるチェスキー・クルムロフ城(Státní hrad a zámek Český Krumlov)を紹介します。
なお、城の奥に広がるザーメツカー庭園(Castle Garden)については前回の記事で紹介していますので、今回は城本体やバロック劇場を中心に紹介します。
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チェスキー・クルムロフ城とエッゲンベルク家
南ボヘミアを代表する名城
チェスキー・クルムロフ城は、13世紀頃にヴィートコフツィ家(Vítkovci)によって築かれたとされるチェコを代表する古城です。

その後、
- ローゼンベルク家
- エッゲンベルク家
- シュヴァルツェンベルク家
へと所有者が移り変わり、そのたびに増築・改築が繰り返され、現在の壮大な姿になりました。
プラハ城に次ぐ規模を誇る城郭ともいわれ、世界遺産「チェスキー・クルムロフ歴史地区」の中心的存在となっています。




グラーツのエッゲンベルク宮殿とも深い関係
オーストリア・グラーツに住んでいると特に興味深いのが、エッゲンベルク家(Eggenberg家)との関係です。
17世紀初頭、神聖ローマ皇帝フェルディナント2世に仕えた名門エッゲンベルク家は、その功績によってチェスキー・クルムロフ領を与えられました。
つまり、グラーツの世界遺産「エッゲンベルク宮殿」を築いた一族が、このチェスキー・クルムロフ城の領主でもあったということになります。
現在でも城内にはエッゲンベルク家の紋章や当時の名残を見ることができ、グラーツとチェスキー・クルムロフが歴史的につながっていることを実感できます。
だまし絵で彩られた城壁
本物の石造りに見える壁
チェスキー・クルムロフ城でまず目を引くのが、建物一面に描かれた装飾です。
近くで見ると気付きますが、実はあの豪華な石造りや柱の多くは、すべて絵です。

ルネサンス時代に流行した「スグラフィット(Sgraffito)」やだまし絵の技法が使われており、平らな壁なのに立体的な柱や装飾があるように見えます。
窓まで絵だった
さらに面白いのが、よく見ると窓まで描かれている場所があることです。

本当はもっと豪華に、もっと窓を増やした建物にしたかったものの、予算の都合で実現できず、絵で再現したともいわれています。
建てた当時の領主にとっては苦肉の策だったのでしょうが、
数百年経った今では「珍しい城」として人気の観光スポットになっているのだから面白いものです。
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城から眺めるチェスキー・クルムロフ
城の回廊や展望スペースからは、市街地を一望できます。
オレンジ色の屋根が並ぶ街並みの中央には、聖ヴィート教会の高い尖塔がそびえ立ち、チェスキー・クルムロフらしい景色が広がります。

城の上から見ると、ヴルタヴァ川が大きく蛇行して街を包み込んでいる様子もよく分かります。
市街地を歩くのとはまた違った景色なので、ぜひ見ておきたいポイントです。
世界でも貴重なバロック劇場
現存する数少ない劇場
チェスキー・クルムロフ城でも最大の見どころの一つが、バロック劇場(Baroque Theatre)です。

18世紀に現在の形へ整備されたこの劇場は、当時の姿をほぼ完全な状態で残す世界でも数少ないバロック劇場として知られています。
バロック時代の劇場は照明に大量のろうそくを使用していました。
そのため火災が非常に多く、ヨーロッパ中の劇場のほとんどが焼失してしまいました。
現在、このような状態で残っている劇場は極めて珍しいそうです。
もちろん現在は安全面から、照明は電灯へ変更されています。
エッゲンベルク家も劇場建設に関わる
現在の劇場の基礎は17世紀後半、エッゲンベルク家の時代に整備が進められ、その後シュヴァルツェンベルク家によって18世紀に現在の豪華な姿へと完成しました。
当時の舞台装置や大道具が今も残っていることから、演劇史・建築史の両面で非常に高く評価されています。
バロック劇場ツアーに参加
約1時間のガイドツアー
バロック劇場は自由見学ではなく、ガイドツアー形式になっています。
(※料金は時期により変動するため、公式サイトをご確認ください。)
最初は観客席で歴史を学ぶ
ツアー開始後、最初の約30分は客席に座りながらガイドさんの説明を聞きます。
劇場の歴史や、当時どのような公演が行われていたのか、舞台装置の仕組みなどを詳しく説明してくれます。
舞台上には、
- 背景セット
- 舞台衣装
- 小道具
なども展示されています。
舞台裏は人力の世界
続いて舞台裏へ移動します。
ここが非常に面白く、舞台の床下には大小さまざまな歯車や木製の機構が並んでいます。

これらを人力で動かし、背景を回転させたり、場面転換を行っていたそうです。
さらに、
- 演者が突然現れたり消えたりするための仕掛け
- 照明を隠す装置
- 舞台裏の通路
なども見学できます。


雨や風まで手作業
さらに驚いたのが、効果音もすべて人力だったことです。
専用の道具を使って、
- 雨音
- 雷
- 風
などを再現していたそうです。
現代ではボタン一つで済むことを、すべて職人たちが手作業で行っていたことに驚かされます。
年に数回だけ実際に公演
現在でも保存のため利用回数は非常に限られていますが、年に数回程度、この劇場で実際にバロックオペラなどの公演が行われています。
ツアーの最後には、その公演の様子を映した映像を見ることができ、約1時間でツアーは終了となります。
城のお堀には本物の熊がいる!
チェスキー・クルムロフ城名物
チェスキー・クルムロフ城で初めて訪れた人が驚くのが、お堀に本物の熊が飼育されていることです。

城へ向かう橋を渡る途中で下をのぞくと、熊がのんびり歩いていたり、日陰で昼寝をしていたりする姿を見ることができます。
「え、本当に熊がいるの!?」と二度見してしまうほどで、子どもだけでなく大人でも驚く光景です。
なぜ城で熊を飼っているの?
これは単なる観光用ではなく、16世紀後半から続く伝統によるものです。
当時の城主であったローゼンベルク家(Rožmberk家)は、自らがイタリアの名門オルシーニ家(Orsini家)と血縁関係にあることを誇りとしていました。
オルシーニ(Orsini)はイタリア語で「熊」を意味する orso に由来するとされており、その象徴として城で熊を飼育するようになったと言われています。
現在飼育されている熊は当時から続く系統ではありませんが、この伝統は現在まで受け継がれ、チェスキー・クルムロフ城ならではの名物となっています。
城の歴史を学びながら、思いがけず本物の熊まで見られるのは、他のお城ではなかなか体験できない面白いポイントでした。
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総括
チェスキー・クルムロフ城は、美しい街並みを眺めるだけでなく、その歴史や建築技術も非常に興味深い城でした。
特に印象的だったのは、
- グラーツのエッゲンベルク家と深い歴史的つながりがあること
- 壁一面に描かれただまし絵
- 城から眺める世界遺産の街並み
- 世界でも数少ない完全な姿で残るバロック劇場
- 舞台裏の人力による舞台装置や特殊効果
といった点です。
市街地散策だけでも十分楽しめますが、チェスキー・クルムロフを訪れるなら、ぜひ城にも足を運び、エッゲンベルク家ゆかりの歴史や貴重なバロック劇場を体感してみてください。

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